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2026年06月30日 [船の豆知識]

富士山が見える日は海が荒れる?回航中に船長から教わった話


いつもポートサービスのブログを読んでくださり、ありがとうございます。

先日、ドック入りのために横浜港(大さん橋)から三浦半島へ船を回航する機会がありました。いつもとは違う海域へ向かう道中、雲の切れ間から見えた富士山に思わず嬉しくなったのですが、海の上では少し事情が違うようです。

東京湾を南下しながら、船長がぽつりと一言。

「富士山が見えるっていうのは、船乗りにはあまり嬉しくないことなんだよ」

きれいな富士山と船の仕事。一見関係がなさそうですが、実は船乗りたちの間では昔から知られている話なのだそうです。今回は、回航中に船長から教わった「富士山と海の関係」についてご紹介します。

ブル回航

船長に聞いた「富士山と海の関係」


船長の説明はシンプルでした。

富士山がくっきり見えるのは、強い風が雲や霞(かすみ)を吹き飛ばしてくれるから。空気中の水蒸気や埃が少なくなり、遠くまで見通せるようになります。

でも、その風は海にも吹いています。

つまり、富士山がきれいに見える日は海が荒れやすいということです。

陸上から見れば絶景の日ですが、船の上では「今日は荒れそうだな」と感じる日でもあります。


北斎はすでに知っていた?


この話を原稿に書きながら思い出したのが、葛飾北斎の『神奈川沖浪裏』です。

大きくうねる波と、その波に翻弄される小舟。そして奥には静かに富士山が描かれています。

この絵は「迫力ある波の絵」として知られていますが、船長の話を聞いたあとで見ると少し違った印象を受けます。

富士山がはっきり見えるほど空気が澄み、その一方で海は大きく荒れている。富士山にかかる雲を吹き飛ばすほどの強い風が、神奈川沖(現在の横浜市神奈川区・本牧の沖合)にも吹いていたことが想像できます。当時の船乗りたちが実際に目にしていた景色が、今も昔もそれほど変わっていないと思うと、興味深いです。


葛飾北斎『神奈川沖浪裏』

▲ 葛飾北斎『神奈川沖浪裏』。奥に富士山が見える。葛飾北斎以降, Public domain, via Wikimedia Commons


なぜ富士山が見える日は海が荒れるのか


以前、静岡を訪れた際に地元の方から「夏は意外と富士山が見えないんですよ」と聞いたことがありました。詳しい日数は覚えていませんが、「8月なら月に数日見えればいい方」という話だったような気がします。

夏は湿度が高く、空気中の水蒸気に太陽の光が反射し、ぼんやりとかすんで見えるためです。

逆に、富士山がよく見えるのは冬場の「西高東低」の気圧配置の日だと言われています。大陸から冷たく乾いた北西の風が吹き込むことで、空気中の水蒸気が少なくなり、遠くまで見通せるようになります。


おわりに


今回は、回航中の船長との何気ない会話から教わった富士山と海の関係をご紹介しました。富士山がくっきり見える日には、「今日は風が強いのかな?」と少しだけ海のことを思い出していただけたら嬉しいです。

今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


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