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2024年07月16日 [横浜の通船・ラインボート ]
【首都防衛】東京湾の海上要塞〜第三海堡跡地を訪ねて〜
はじめに
いつもポートサービスのブログを読んでくださり、ありがとうございます。
前回のブログ『東京湾に今も残る海上要塞「海堡」とは?』は読んで頂けましたか?今回も引き続き、東京湾の歴史を辿っていきたいと思います。今回は、実際に横須賀市内の第三海堡跡地に足を運んで、現在の様子を紹介します!海堡について知りたい方は、まずはこちらをチェック👍
海堡とは
海堡とは海上に人工的に造成した島に砲台を配置した要塞のことをいいます。第一、第二、第三と、3つの海堡が造られたのは、富津市と横須賀市の間を通る、東京湾の入口 浦賀水道。明治から大正にかけて造られ、首都防衛の役割を担っていました。
『海堡』〜役割を終えたそれぞれの現在〜
軍事施設としての役割を終えた現在は、どのような姿になっているのでしょうか?
第一海堡は東京湾を行き交う船の安全を見守る施設となり、国土交通省により管理されています。役割を終えた現在は立ち入り禁止となり、千葉県の埋蔵文化財包蔵地に指定されています。
第二海堡は強固な基礎と防波壁により、現在でもその姿を残しています。天気が良いと陸地から見ることができ、実際に上陸して歴史的な資源を見学できるツアーなども開催されています。▲第二海堡の監視のために横須賀新港に停泊するジュピター
水深の深さや潮流の速さから、建設に困難を極めた第三海堡。竣工からわずか2年後には関東大震災に見舞われ、短い歴史に幕を閉じました。
その後、年々沈降が進み、第三海堡は暗礁化していきました。海の難所と知られる浦賀水道ゆえ、暗礁化した第三海堡が海難事故の引き金となったケースも多くありました。そのため、2000年には、航路として安全な水深を確保するために撤去工事が開始。一部の構造物は第三海堡跡南西2,000 mの海域に投棄され、魚礁として再利用されています。
また、兵舎や弾薬庫など、陸揚げされた構造物は横須賀市にある夏島都市緑地内で、大型兵舎はうみかぜ公園にて展示されています。
海上から移設された海上要塞〜第三海堡跡地〜
水深約40mという場所に建設された第三海堡。『無謀な工事』と揶揄されるほど、当時の水準をはるかに超える技術が用いられていました。しかし、1923年(大正12年)の関東大震災により、第三海堡のコンクリ−ト構造物はほとんどが海中に転落・傾斜してしまいました。
ただし、不等沈下対策が⾏われていたため、軍事施設や建物は奇跡的な状態を留めました。全国の港湾で⾏われている⼈⼯島建設の先駆とも言える技術力は、アメリカ陸軍から自国の海堡建設の参考にするため、資料提供を求められたほどです。
不等沈下:建物やその基礎が傾いて沈下する現象
ここからは建設から100年以上が経過し、海上から移設された第三海堡の姿を見ていきます。
❖夏島都市緑地内❖
夏島都市緑地内には、海上を照らす探照灯、砲弾を保管する砲側庫(弾薬庫)、敵艦の位置を計測する観測所が展示されています。
▲工場地帯の奥地に突如姿を現す第三海堡遺構。フェンスに囲われていても、周囲を圧する存在感を放っている。
▲砲側庫。建設から100年以上経過した今も、堂々たる姿を留める。▲小さな窓からは砲弾の受け渡しが行われていた。▲観測所。指揮、観測、通信連絡に便利なように、視界が広く、高い場所に設置されていた。▲観測所と接する構造物ににも砲側庫があり、小窓から大砲へ砲弾を送りだしていた。▲探照灯。照射距離は良好な気象状況で7~9qに及んだ。
❖うみかぜ公園❖
うみかぜ公園内には、兵士たちが休憩したり、戦闘時には退避するために使われた兵舎が展示されています。兵舎前面はイギリス積みの煉瓦壁で、その他は鉄筋コンクリート造となっています。室内天井はカマボコ型になっており、奥には左右の砲座へ続く連絡通路が残っています。
▲首都防衛という重責を終えた兵舎と、笑い声が響く公園。相容れない2つのコントラストが、時間の流れを感じさせる。▲“首都防衛”の勲章か、外壁には多くの傷跡が残る。▲前面壁は強度が強い『イギリス積み』を採用。
イギリス積み:レンガの長手のみを並べた段と、小口のみを並べた段を交互に積む。強度が高く、使用するレンガが少なくて済むため土木構造物や鉄道の橋梁などにも使用されている。
おわりに
第一海堡で32万人、第二海堡で50万人もの作業員が従事した東京湾の海堡建設。工期が一番長くかかった第三海堡の工事費は、現在の価格にして140億円にも上るそうです。
首都防衛という重責を負い、技術の粋を集めて建設された『海堡』。100年以上がたった今では、要塞としての役割を終えて安息の姿を残しています。今回も最後まで読んでくれてありがとうございました。
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